私たちのデジタル活用物語

地域課題と担い手を繋ぐ：オンラインプラットフォームで実現するボランティア活動の効率化事例

地域活動の新たな可能性：デジタルツールが変えるボランティア運営

地域をより良くするための活動において、ボランティアの存在は欠かせません。しかしながら、ボランティアの募集から参加者の管理、活動中の連携に至るまで、その運営には多くの時間と労力がかかるのが現状です。特に、多様な人材の確保や若年層の参加促進は、多くの団体にとって共通の課題と言えるでしょう。

このような課題に対し、デジタルツールはどのように貢献できるのでしょうか。本記事では、特定の地域団体がオンラインプラットフォームを活用することで、ボランティア活動の募集、マッチング、運営を劇的に効率化し、その結果として活動を活性化させた具体的な事例をご紹介します。

事例紹介：「緑豊かな里山を次世代へ残す会」のデジタル活用

ここにご紹介するのは、荒廃が進む里山の保全活動に取り組む「緑豊かな里山を次世代へ残す会」（仮称）の事例です。この団体は、伝統的な手法に加えて、デジタルツールを積極的に導入することで、活動の幅を大きく広げました。

1. 背景にあった課題：募集と運営の非効率性

「緑豊かな里山を次世代へ残す会」では、活動開始当初、ボランティアの募集を主に回覧板や地域の掲示板、口コミに頼っていました。その結果、情報が届く範囲が限られ、参加者は固定化しがちで、特に若い世代の参加が難しいという課題に直面していました。また、参加希望者のスキルや希望活動内容を個別に聞き取り、手作業でマッチングを行うため、多くの時間が費やされていました。活動中の連絡調整も電話やメールが中心で、情報共有の遅れや誤解が生じることも少なくありませんでした。

2. 活用したデジタルツールと具体的な活用方法

団体はこれらの課題を解決するため、以下のデジタルツールを導入しました。

• ボランティア募集・マッチングの効率化：GoogleフォームとGoogleスプレッドシート

  • Googleフォームの活用: 募集活動に際し、オンラインで簡単に回答できるGoogleフォームを作成しました。フォームには、氏名、連絡先、希望する活動内容（草刈り、植林、清掃活動、イベント運営サポートなど）、参加可能な日時、得意なスキル（重機操作、写真撮影、広報経験など）を詳細に記入してもらう項目を設けました。これにより、応募者は自宅から手軽に申し込めるようになり、団体側も多様な情報を効率的に収集できるようになりました。
  • Googleスプレッドシートでの管理: Googleフォームから自動的に集約された回答は、Googleスプレッドシートで一元管理されました。このスプレッドシートには、応募者の情報だけでなく、各活動のニーズ（例：特定の日に草刈りが5人必要、イベントの広報担当者1人募集）も入力され、フィルタ機能や簡単な関数を用いることで、活動内容と参加者のスキルや希望を効率的に照合できるようになりました。これにより、個別の問い合わせ対応や手作業でのマッチング作業が大幅に削減され、担当者の負担が軽減されました。

• 活動中の情報共有・連携の強化：Slack

  • プロジェクト別チャンネルの開設: 活動の種類やプロジェクトごとにSlackのチャンネルを作成しました。「全体連絡」「里山保全プロジェクト」「イベント準備」といったチャンネルを設け、必要な情報が必要な人に届くように工夫しました。
  • リアルタイムの情報共有: 活動日時や集合場所の変更、持ち物リスト、作業指示書、活動中の写真や動画などをチャンネル内でリアルタイムに共有しました。また、参加者からの質問にも迅速に回答できる環境が整いました。過去のやり取りも簡単に検索できるため、情報の確認漏れを防ぐ効果も生まれました。
  • ファイル共有機能の活用: 活動に必要な資料や地図、安全管理に関するドキュメントなども、Slack上で共有され、メンバー全員がいつでもアクセスできるようになりました。

• タスク・進捗管理の可視化：Google Workspace（Googleドキュメント、Googleカレンダー）

  • Googleドキュメントでの共同作業: 各活動の作業手順書や役割分担表などは、Googleドキュメントで作成し、メンバー間で共同編集できるようにしました。これにより、情報の更新が容易になり、全員が常に最新の情報を確認しながら作業を進められるようになりました。
  • Googleカレンダーでのスケジュール共有: 活動日時、事前説明会、打ち合わせなどのスケジュールはGoogleカレンダーで共有されました。参加者は自身のスマートフォンやPCからいつでもスケジュールを確認でき、リマインダー機能により、参加忘れを防ぐ効果も得られました。

3. 活動中の工夫と苦労

デジタルツールの導入は決して順風満帆ではありませんでした。初期段階では、デジタルツールに不慣れな高齢のメンバー向けに、使い方の説明会を開催したり、個別にサポートしたりする手間がありました。また、情報が過多にならないよう、どの情報をどのチャンネルで共有するかといったルール作りや、通知設定の最適化にも工夫を凝らしました。一方で、デジタルツールを使えない、または使わないメンバーへの情報伝達手段として、従来のアナログな手法（紙媒体での情報配布や電話連絡）も併用することで、全員が疎外感なく活動に参加できる体制を維持しました。

4. デジタル活用によって得られた成果と学び

「緑豊かな里山を次世代へ残す会」のデジタル活用は、以下のような具体的な成果をもたらしました。

• 参加者層の拡大と多様な人材の確保: オンラインでの募集により、地域外からの参加者や、これまで接点の少なかった若年層の参加が増加しました。結果として、広報やITスキルを持つボランティアが加わるなど、活動の幅が広がりました。
• 運営効率の大幅な向上: ボランティアの募集、マッチング、連絡調整にかかる時間が従来の半分以下に削減されました。これにより、事務作業に費やされていた時間を、より本質的な活動計画の策定や現場作業に振り分けることが可能になりました。
• 情報伝達の迅速化と透明性: 最新情報がリアルタイムで共有され、メンバー間の認識の齟齬が減少しました。活動中の緊急連絡もスムーズに行えるようになり、安全管理にも寄与しています。
• 活動の継続性と発展性: 効率化された運営体制により、既存の活動を安定して継続できるだけでなく、新たなプロジェクトの企画や、より大規模なイベントの実施にも挑戦できるようになりました。

この事例から学べることは、デジタルツールは単なる便利ツールではなく、地域活動の根幹を変え得る力を持つということです。重要なのは、高価な専門システムを導入することではなく、GoogleフォームやSlackのような身近で比較的安価、あるいは無料で利用できるツールを、団体の課題に合わせて適切に組み合わせ、活用することです。そして、デジタルに不慣れなメンバーへの丁寧なサポート体制も、成功への鍵となります。

まとめ：一歩踏み出す勇気が、地域活動の未来を拓く

「緑豊かな里山を次世代へ残す会」の事例は、デジタル活用が地域ボランティア活動にもたらす大きな可能性を示しています。デジタルツールを導入することで、募集の効率化、マッチング精度の向上、情報共有の迅速化、そして運営負担の軽減が実現し、結果としてより多くの人々が地域活動に参加しやすくなりました。

もし現在、地域活動の運営に課題を感じているのであれば、まずは身近なデジタルツールから、小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。その一歩が、あなたの地域活動をさらに豊かにし、より多くの人々と地域課題を解決していく原動力となることでしょう。